2013年8月11日日曜日

どおくまん 特別エッセー

太地大介の思い出 その5

■ 自転車の話-1

『おまえら薄情な奴やの』

元大学空手部主将の兄貴は、1年足らずで辞めてしまった私達を、見るたびにそう言ったが、アルバイトを増やしてなんとか仕事をやりくりし、実家の工場も順調そうだ。

一応兄貴だから、文句を言いながらでも、私達が忙しくなっていくのを、嬉しそうに見ている様にも見える。

さて、仕事場が吹田に移転した当初、私は実家から自転車で、弟(太地大介)と、吹田まで通っていた。阪急電車なら、ふた駅なのだが、自転車で普通に走れば約40分位かかる。

若かった私達は、途中相川の土手におり、競輪選手?並にぶっ飛ばした。もちろん毎日競争だ。
途中、路地裏や、河川敷の急坂を登り降りを繰り返し、ベストタイムをたたき出す。

毎日の長時間の座り仕事の中で、唯一の楽しい運動の時間でもあった。
片道のタイムは約20分前後で、たいがい私が勝ったが、弟もなかなかやる。

ある時私は、仕事場からの帰り、もう夜の11時をとっくに過ぎていた頃、下新庄の路地の手前で弟に抜かれた。
『くそったれーまてー』と必死で追う私。
弟は続いて2つ目の細い路地の角を曲がった、その時である。

キキキーーーガシャーーン

『うっ交通事故か?』

私は急いでその路地の角を曲がった。


...つづく

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